約10年前、当社は妥協ない「ホンモノ」を追及する体質づくりとして、生産システムの改造に着手しました。この過程で、それまで徹底して実施していた完成品の全数検査をやめ、抜き取り方式の簡単な最終検査に変更しました。品質重視なのに検査を簡単にするなんて変に思う人もいるかも知れませんが、実際お客様からのクレームは毎年減少を続け、品質はよくなっています。
そもそも、不良品を作るから検査が必要なのです。100万個の製品の中に1つでも不良品があるとクレームとなってしまいます。それで多くのメーカーでは全数検査をしているようです。

全数検査には2通りの方法があります。ひとつは写真のような「選別機」を使用する方法です。多数のねじを高速で検査できますが、選別機で検出できない種類の不良も多くあります。これは最新の画像選別機でも同様で、人間の目のように万能ではありません。
もうひとつは「目視検査」です。検査員の目でほとんどの種類の不良を判別できますが、検査員も人間なので何時間も検査を続けると集中力が落ち、いつか必ず不良を見落とします。全数検査は危険です。それに、全数検査に頼っていたら製造工程の品質は向上しません。
検査を厳しくするよりも、初めから不良品を作らない方法を考えるべきでしょう。
「工程で品質を作りこむ」 これが当社の思想です。
不良品を最終検査で取り除くのではなく、不良の発生源を絶つという考え方です。
当社のねじ製造設備は、無人運転中に不良が発生すると自動停止するようになっています。設備が止まるとオペレーターがやって来て、速やかに異常を処理し、生産を再開します。自動停止の頻度が多いようであれば、機械や材料に問題があるのかも知れません。そうした原因を分析して改善を繰り返すことで、工程の品質を向上させることが可能です。こうして当社は「全数検査不要の製造工程」を実現することができたのです。

どんなに人手やお金をかけて検査をしても、検査にかかる費用を製品に上乗せはできません。しかし、工程で不良を検出し、対策するしくみを整えて改善を積み重ねていけば、最終的に検査を簡単にして、費用を抑えることができます。さらに品質が継続的に向上します。
現在の生産システムの確立まで長い年月がかかりましたが、まだまだ完成とは言えません。過去より良いだけでなく、お客様の更なる期待に応えるため、更なる高品質を目指します。