2009年05月21日

十字穴の形状

十字穴付ねじの締結品質に重要な要素は以下の3点だと考えています。

1.十字穴とビットの食い付きが良いこと
2.十字穴とビットのガタツキが小さいこと
3.リセスの芯ぶれが小さいこと

以前の記事で、先に3について詳しく記述したために順序が前後してしまいました。
1と2を必死に研究しても、3を見落とすとあまり意味がなくなってしまうのですが、
今回は3を解決していると言う前提で、十字穴の形状についてお話したいと思います。

ねじを使うときに必ず必要なもの。それはねじ回しです。ねじとねじ回しの相性は大切です。
ねじとねじ回し

1.十字穴とビットの食い付き
締結を行なうとき、ねじがドライバビットの先端にピタッとくっつくと作業がラクです。鉄ねじの場合、マグネット付きの工具を使えばねじはビットの先端にくっつきますが、代表的なステンレスねじは磁性がないため、マグネット工具にはくっつきません。(厳密には微かにくっつく場合もあります)そのため、ステンレスねじの締結にはビットと十字穴の食い付きが重要となります。食い付きとは、磁力に頼らず、ねじとビットの嵌め合いだけでくっつく現象です。

2.十字穴とビットのガタツキ
手回し程度の力では食い付きだけでいいのですが、高回転・高トルクの電動工具となるとそれだけでは不十分です。十字穴とビットの間にガタツキがあるとドライバがガクガク振れてトルクがうまく伝わらず、カムアウト(十字穴が潰れる現象)が発生しやすくなります。ねじ回しの力をロスなくねじに伝えるためには、ガタツキを抑える必要があります。

しかし世間にはビットとの食い付きが悪いねじ、ガタつくねじが多いのが現状です。JIS規格では十字穴が「食い付きゲージ」に食い付けば合格となるからだと思います。実際、食い付きゲージと市販のビットは微妙に形状が異なるので注意が必要ですし、ガタツキについては、JIS規格にはそういう概念はありません。

ねじメーカーは、ビットに食い付き、ガタツキのないねじを作る必要があるはずなのに、いつの間にか食い付きゲージに食い付かせることだけが目的になってしまったようです。こうしてJIS規格には適合していても実際は使いにくいねじができてしまうのです。

Q
さて、解決法としてよくあるのが、十字穴を深くするという方法です。十字穴の深さはJIS規格の範囲がとても広いため、かなり自由に設定することができます。しかし、十字穴を深くすると金型の耐久性が低下してコストアップになります。また、十字穴がねじの首下に届くくらい深くすると、ねじの強度が低下してしまいます。そして十字穴を深くすることでガタツキは抑えられますが、食い付きは改善しません。

当社が採用している十字穴は、深さを変えずにを形状を設計変更することで、ねじの強度を損なうことなく、食い付きの向上とガタツキの低減を実現しています。詳しい改善内容は、ヒミツです。

さらに品質保証の面では、当社では食い付きゲージ試験だけでなく、市販のビットによる食い付き試験も同時に行ない、性能を保証しています。
食い付き保証

当社のねじを使うと、以下のような効果を得ることができます。
・十字穴のカムアウトが低減します。
・締結作業中の頭飛び、ねじの千切れが低減します。
・ガタツキのない、安定した締結ができます。
・ドライバビットが長持ちします。
・締結のミスが減るため、相手部材のムダも減ります。

使うとわかる違いを、ぜひ体感してください。
posted by 興津螺旋 at 23:00| Comment(0) | 品質について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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